文学講義　４０８／Lectures on Literature 408 Lectures on Literature 408

【授業の目標 / Course Objectives】

18世紀末から19世紀初頭にかけ、欧米で舞台演劇ジャンルとして形成された「メロドラマ」は、善と悪の二元論的対立のドラマ、無垢なヒロイン、ヒーロー、悪漢など、それぞれの道徳的立場をオーディエンスが明瞭に認知できるように造型・演出されるキャラクター、センセーショナリズムとセンチメンタリズムなどを特徴とした。19世紀以降の「メロドラマ」は、国境、世代、メディア、ジャンルの境界を超えて拡張、浸透し、多彩なヴァリエーションを生み出しており、今日の英語圏における文化批評・研究で、汎用性の高い概念のひとつとなっている。
この授業では、英語圏の文献を中心とする先行研究の概要を学び、「メロドラマ」の定義と歴史を把握したうえで、近現代の日本のマンガ・アニメほか大衆的物語文化におけるメロドラマ的想像力と様式のありようについて検証する。
ジャンルまたは様式としての「メロドラマ」を学ぶことで、個別の作品が複数の他の作品とどのように関連し、地域の社会、産業、文化の歴史のうちにどのように位置づけられるかを検討していく。また、大衆的・商業的な芸術文化が、「倫理・道徳」及び「感覚・感情」をどのように扱ってきたか、それが近代以降の社会に生きる個人の主観にどのように影響してきたかについても考察を深める。
授業で得た知見を、個別の作家もしくは作品についての分析に役立て、学術的かつ批評的な文章を、参考文献を的確に活用しつつ執筆する訓練を行う。

"Melodrama" was established as a theatrical genre in Europe around the end of the 18th century. It is characterized by the dramaturgy of dualistic conflict between good and evil, characters who are built and staged in order to the audience can clearly recognize each moral position such as innocent heroin, hero, or villain, and the effects of sensationalism and sentimentalism. Since the 19th century, "Melodrama" has expanded and permeated across borders, generations, media, and genres, producing numerous variations. "Melodrama" has become one of the most versatile concepts in cultural critics and studies in the English-speaking world today.
In this class, we will study the definition and history of "melodrama" through an overview of previous studies, and examine the nature of melodramatic imagination and style in manga, anime, and other popular narrative cultures in contemporary Japan.
By studying "melodrama" as a genre or style, we will examine how individual works relate to other works and how they are situated within the social, industrial, and cultural history of the region. We will also examine how popular and commercial art and culture have dealt with "ethics and morality" and "sensation and emotion" and how this has affected the subjectivity of individuals in post-modern societies.
Students will be trained to use the knowledge gained in class to analyze individual writers and their works, and to write scholarly and critical texts, making appropriate use of references.

【授業の内容 / Course Contents】

「メロドラマ」は、１８世紀末に欧米で舞台演劇ジャンルとして成立し、１９世紀には舞台および小説メディアを介して世界的に普及し、２０世紀初頭に映画がストーリーを語りはじめた際には重要なリソース源となり、その後、テレビドラマ、アニメーション、漫画、報道、広告等々に浸透してきた。戦後日本のマンガ及びアニメにも、メロドラマの多様なヴァリエーションを見出すことができる。授業では、英語圏のメロドラマ研究について概説しつつ、メロドラマの定義、歴史、日本におけるメロドラマの受容と独自の展開について学び、昭和戦後から現代に至るまでのマンガ及びアニメ作品における「メロドラマ的想像力」についても分析・考察を試みる。

"Melodrama" was established as a theatrical genre in Europe at the end of the 18 century, and then spread worldwide through stage and novel media in the 19 century, and became one of the important resources for motion picture that began to tell stories in the early 20 century. Variations of "melodrama" also can be found in manga and anime in postwar Japan. In this course, we will learn about the definition and history of melodrama, the acceptance of melodrama in Japan, and its unique development. We will also learn about the fruits of English melodrama studies. And we will consider the "melodramatic imagination" in manga and anime from the Showa period to the present Japan.

【授業計画 / Course Schedule】

【活用される授業方法 / Teaching Methods Used】

板書 /Writing on the Board
スライド（パワーポイント等）の使用 /Slides (PowerPoint, etc.)
上記以外の視聴覚教材の使用 /Audiovisual Materials Other than Those Listed Above
個人発表 /Individual Presentations
グループ発表 /Group Presentations
ディスカッション・ディベート /Discussion/Debate
実技・実習・実験 /Practicum/Experiments/Practical Training
学内の教室外施設の利用 /Use of On-Campus Facilities Outside the Classroom
校外実習・フィールドワーク /Field Work
上記いずれも用いない予定 /None of the above

【授業時間外（予習・復習等）の学習 / Study Required Outside of Class】

・メロドラマ論の主要文献は日本語訳されていないものが多いため、英語圏の複数のメロドラマ論の抜粋訳をオンラインで参考資料として配布する。必ず目を通してから授業に参加すること。

・授業では複数のマンガ、アニメ、映画作品を取り上げる予定だが、授業時間内に参考映像作品を全編通して上映することは不可能であるため、授業外に対象作品を全編視聴できる時間と環境を確保することが望ましい。
現状では下記作品を取りあげることを予定している。
『レ・ミゼラブル』（トム・フーパ―監督、2012年）
『タイタニック』（ジェームズ・キャメロン監督、1997年）
吾峠呼世晴『鬼滅の刃』及びテレビシリーズ第１シーズン
『映画　鬼太郎誕生　ゲゲゲの謎』（水木しげる原作、古賀豪監督）
『ルパン三世　カリオストロの城』『天空の城ラピュタ』（宮崎駿監督）
『言の葉の庭』『君の名は。』『天気の子』（新海誠監督）
大今良時『聲の形』、『聲の形（劇場版）』（山田尚子監督）

【成績評価方法・基準 / Evaluation】

【テキスト / Textbooks】

なし/None

【参考文献 / Readings】

【履修にあたって求められる能力 / Abilities Required to Take the Course】

日本語の学術文献を読みこなせること。
授業時間以外に映画作品を視聴する時間と手段を確保できること。

【学生が準備すべき機器等 / Equipment, etc., that Students Should Prepare】

授業資料は主にpdfファイルで配布するため、pdfを開いて閲覧できる環境が必要となる。
授業支援システムとしては主にCanvas LMSを使用する予定。

【その他 / Others】

講義資料配布、参考文献紹介、小課題提示等はLMSを通じて行う。

【注意事項 / Notice】